ブログ住まいづくり考

左官のこと

5月の中ごろ新倉敷駅近くの職業能力開発大学校にて左官仕事の講習会の見学にうかがってきました。日本屈指の左官親方が全国から集まった若き左官職人を指導し伝統の技を伝えていく有意義な勉強会です。左官仕事は以前より関心がありその技を少しでも理解できればと楽しみにしておりました。
最近では、左官で壁を仕上げるといっても既製品がほとんどでパック詰めされた粉に水を指定された分量混ぜるものや、すでに出来上がったクリーム状の材料を塗りつけていく仕事が多いのが実情です。
ですが本来は左官職人が材料を取り寄せ分量を少しずつ調整しながら壁を仕上げその職人でしかできない仕上があったようにおもえます、そんな職人さんも全国には少数ながらおられます、そんな方々のお話する中でとても気になる言葉をいただきました。
「今は急いで建物を完成させようと躍起になっている。建物が完成したときが一番綺麗に見える建物がいいようだけど、そのときどきの住まいの状況を楽しめないでいるのがもったいないね。」
左官の仕事は竹や木材で網目状の下地をまずこしらえその上に泥と水、藁などの植物繊維を混ぜ込み粘りを出したものを下地に塗りつけ土の乾燥を待って徐々に粒子の細かな仕上げ材料を塗っていきます、それだけ手間と時間がかかる仕事だと思います、今の完成を急ぐ建築とは違い時間をかけた反対の存在なのかも知れません。
ただ自分がつくる建築には左官の仕事が欠かせない存在です、手間や時間をかけないとできない仕事がそこにあるからです。
下地の土壁のまま何年かそのままにし建物の動きや気候の状況によりそってから仕上をすることで隙間や割れの少ない仕上げとしてきました。もちろん下地のままの場所もあってよいのだと思います。緩やかに穏やかにが左官仕事の本来の鉄則のような気がしました。

 

 

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