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町並みと文化財

平成25年に「岡山県の近代和風建築」という本が岡山県教育委員会より出版されました。名前の通り岡山県内の代表的な近代和風建築をまとめたものになります。この本に掲載されているいくつかの建物の調査にたずさわりました。調査内容は建物と敷地形状を調べ図面化し、建物がつくられ背景やその後のいきさつを聞き取りと文献を調べまとめたものです。掲載している写真も撮影しました。その調査にたずさわったもののうち3件が国登録文化財に選ばれました。山陽新聞の11月16日の朝刊に掲載されております。1つは新見市千屋の「いろりの家」(竹本家)で現在は宿泊施設として利用。明治30年ごろの建築されたもので、この地方での産業である農業・林業・畜産・養蚕と歴史のなかで中心産業を変化させながら残っている建築です。

広い土間と牛屋をぬけて板の間に上がると、いろりがあり、見上げるといろりの煙抜けになっている吹抜けには、大きな地松の丸太が目に飛び込んできます。長年煙にいぶされ黒光りする松丸太は印象的です。当時の山間部での生活を容易に想像することができます。

残りの2つは私の里である勝山の町並みに建っている、「岡野屋旅館」と「辻本店」です。岡野屋は旭川の河川敷に足元をつっこんだかたちで縁側を支える柱が建っています。この建物は一度、壊されてしまうと現在の法律の下では二度と建築することのできない建物となっています。建築は明治40年と伝わっています、当時の勝山では一番多くの人があつまることが出来た建物で結婚式もおこなわれたと聞いています。辻本店は言わずと知れた御前酒の蔵元で創業200余年、谷崎潤一郎も訪れたことがあるそうです。県内ではじめて指定された町並み保存地区の中心的な建物です。この2つの建物は私のなかでは大きな存在の建物です。今から30年前、小中学校の通学時に橋の上から見ていた変らない風景です。今もほとんど変ることなく残っている風景。実家に帰省したときは必ずお酒を購入しに辻本店を訪れます。祖父・父・私、もしかすると曽祖父も楽しんでいたお酒が変らず残っていることうれしく思います。しかし現在、町並みはゆっくりと変っています。それは良い方向・未来へつながる方向なのかどうなのか考えどころではあります。私は岡山の片田舎の町並みは本当に価値のあるものだとおもっています。

たまに海外へ旅行することがあります。西洋であったり、南米、アジア、隣国であったり様々ですが必ず訪れるのは都市部の中心ではなく片田舎の昔から変わりない風景です。その国のその場所にしかないものはもう都市部には少なく、その場所を感じるのは変ることなく残っている田舎にしか存在しないのではといつも旅行では感じています。私以外の旅人もいずれ海外からも岡山の田舎に訪れていただける町になればと日ごろより考えています。

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